地底から地上を目指す夢
love-neniye
地底の世界にはたくさんの部族がいて、それぞれのリーダーの元でまとまっている。しかし年月が経つにつれ、 リーダーの思いに共感しない若者も増えてきていて、部族単位の社会という基盤がぐらついてきている。自分もあまり部族社会の存続を望んでおらず、かといって新しい社会のかたちが見えているわけでもない。
ひとつの新しい流れとして、地上を開拓することを考えている人たちがいた。フロンティアとしての地上で、何か新しい世界を構築することを目指すという姿勢に、自分も非常に興味があった。ただ、自分の所属していた部族は「灰色の泥」を身にまとう習慣があり、その泥はあまりよい匂いがしないので、地上へ出たときにすごく目立つのではないかと心配していた。しかし地上といっても、まずは今は使われていない廃坑を探索することから始めるようで、それならば匂いの影響も少ないと考えられるので、地上への探険に参加することにした。
地下から続く階段を上がっていくと駐輪場があり、そこで体についていた泥を拭ってから廃坑へ向かう。実際の廃坑の通り道は思っていたよりも狭かった。最小限の掘削を徹底していたのだろう。大人がやっと通れるくらいの空洞をほふく前進のような動きでなんとか進んでいくと、広い場所に出た。
どうやらここは食堂として使われていた場所らしい。何か電源の入った装置があり、スイッチらしき場所が光っていて、まだ稼働しているようだ。体の水分を計測する装置のようで、使ってみると標準状態よりもかなり水分が不足しているという結果が出た。つまり逆にいえば、水分にだけ注意すれば地上に(少なくとも廃坑に)移住は可能だということになる。
一刻も早く自分の部族にこのことを伝えるべきだ、と思った。
起床。
灰色の泥は部族間の一種のマーキングなんだろうなと思う。全然共感できない先輩の言葉、みたいなものの総体を地底の世界が表しているような気がする。